「令和8年度 下水道事業研修会」を開催しました。
自治体の下水道事業に対する正確な理解と認識を持ち、発注者からの様々なご要望により適切にお応えするために、中部支部では中部地区9県を対象に『下水道事業研修会』を開催しております。
今年度は「三重県」「愛知県」「岐阜県」「静岡県」の4県にご協力をいただき、標記研修会を以下プログラムにて実施いたしました。
■第一部:各県の下水道事業の現状と今後の見通し
各県ご発表者様
①三重県県土整備部下水道事業課 丹羽 要樹 課長、服部 由直 課長補佐兼計画・事業班長
②愛知県建設局上下水道課 太田 雅暢 担当課長(企画・計画)、道端 浩司 課長補佐(企画調査グループ)
③岐阜県都市建築部下水道課 中島 広樹 技術課長補佐兼公共下水道係長
④静岡県交通基盤部都市局生活排水課 紅野 伸修 課長、大塩 達由 生活排水班長
■第二部:意見交換会(テーマ:より良い成果を目指すために)
①各県からのコンサルタントに対する要望
②水コン協からの「要望と提案」を含めた回答
開会に際して、庄村 昌明 中部支部長より挨拶をいただきました。
・前回の本4県での開催はWEBで行っており、前回からの大きな変化として、ウォーターPPPの本格導入、能登半島地震、上下水道一体、八潮市での道路陥没事故、今年7月の下水道法改正、令和8年熊本地震などがありました。
・これらの課題に取り組んでいくためには水コン協と自治体との連携が必要不可欠です。安全確保や下水道マネジメントの確立などが求められる転換期を迎えた今、最善の提案ができるよいパートナーとして研鑽していきたいと考えています。本研修会は、現状と課題を共有して良い提案ができることを目的として開催いたします。

4県を代表して、三重県県土整備部下水道事業課 丹羽 要樹課長より挨拶をいただきました。
・令和8年熊本地震、令和8年8月千葉豪雨での被災にお悔やみを申し上げるとともに、復旧・復興をお祈り申し上げます。また、本下水道事業研修会の開催に心よりお喜び申し上げます。
・昨今、下水道事業を取り巻く環境は大きな変化を迎えており、災害に強いインフラの平時からの備えが重要であることが改めて指摘されています。八潮市の道路陥没は住民生活に大きな影響を与え、計画的・効率的に点検改築を進めていく必要性を再認識することとなりました。
・いま、人口減少、財政減少、職員不足、技術継承などの様々な問題を解決するために、民と官とが連携して事業経営の最適化を図ることが求められています。
・強靭な下水道とするため、引き続きのご協力をお願いするとともに、各県の取組や見通しを通じて、持続できる下水道を築いていくことに役立つことを期待します。

■各県の下水道事業の現状と今後の見通し
三重県県土整備部下水道事業課 丹羽 要樹 課長、服部 由直 課長補佐兼計画・事業班長
・三重県の下水道事業の現状と今後の見通しとして、三重県内の下水道処理人口、集約か分散かを誰が決めるのか?、広域化・共同化、官民連携の取組状況、北勢沿岸流域下水道(南部処理区)、中勢沿岸流域下水道(志登茂川処理区)、中勢沿岸流域下水道(雲出川左岸処理区)、中勢沿岸流域下水道(松阪処理区)、宮川流域下水道(宮川処理区)の状況、下水道管路の老朽化、全国特別重点調査の結果、埼玉県八潮市における道路陥没事故後の対応として三重県独自調査および調査結果をふまえた取組、リダンダンシー計画による複線化、経営戦略、栄養塩類管理運転、地震対策、カーボンニュートラルへの対応等についてお話をいただきました。

愛知県建設局上下水道課 太田 雅暢 担当課長(企画・計画)、道端 浩司 課長補佐(企画調査グループ)
・愛知県の下水道事業の現状と今後の見通しとして、あいち下水道経営ビジョン2035、未普及対策、栄養塩管理(窒素とリンの放流水質の濃度規制値の緩和、社会実験)、地震対策(上下水道施設の耐震化、あいち防災アクションプラン、ソフト対策の実施(BCP))、老朽化対策、広域連携(広域化・共同化計画、流域下水道を核とする汚水処理施設の統合、県と市町村の上下水道の一本化)、下水道資源の有効活用、カーボンニュートラル(あいち地球温暖化防止戦略2030、矢作川・豊川CNプロジェクト、県内下水道施設初のPPA方式による太陽光発電、焼却廃熱を利用した発電)、情報発信、人材確保・育成(愛知県下水道科学館、官民連携の下水道研修会)等についてお話をいただきました。

岐阜県都市建築部下水道課 中島 広樹 技術課長補佐兼公共下水道係長
・岐阜県の下⽔道事業の現状と今後の見通しとして、岐阜県の下水道の歴史(岐阜市が日本初となる分流式下水道に着手した都市!)、岐阜県汚水処理施設整備構想、岐阜県汚水処理事業広域化・共同化計画、木曽川右岸流域各務原浄化センター(耐水化計画、地震対策、老朽化対策)、水の官民連携(ウォーターPPP)、全国特別重点調査の結果等についてお話をいただきました。

静岡県交通基盤部都市局生活排水課 紅野 伸修 課長、大塩 達由 生活排水班長
・静岡県の下水道事業の現状と今後の見通しとして、持続的な汚水処理の取組、着実な生活排水処理施設の整備推進、強靭で持続的な汚水処理システム、モンゴル国ドルノゴビ県における生活排水処理技術支援(再生水資源の活用、臭気対策、内水浸水対策への取組)等についてお話をいただきました。

■意見交換会(テーマ:より良い成果を目指すために)
①水コン協からの「要望と提案」に対する意見
【三重県】
1)処理場におけるリダンダンシーとメンテナビリティーの確保
・処理場において、主要機器(複数配置)以外のリダンダンシー確保は、どのように取り組まれてきたか。
・ 屋内設備における高所のメンテナビリティ―はどのように取り組まれてきたか。
2)「水の官民連携」 管理・更新一体マネジメント(Lv3.5) における導入効果の見立て
・「維持管理上の気づき」を踏まえた更新計画の策定とはどのように取り組まれてきたか。
・「効率的・効果的な維持管理」 を検証するための指標とはどのようなものを用意できるのか。
【愛知県】
1)事業運営の一体化(広域連携)
・ 広域連携時に必要となる上下水道の各種計画等の見直しに対して協力をお願いしたい。
2)分散型システムの推進
・地理的に広域化し難い簡易水道事業において、どのような小規模 分散型システムを構築する必要がある。
・下水道事業において、将来の人口減少を踏まえた、集約型(下水道)分散型(浄化槽)のベストミックスについて、すみ分け方をどのように検討し全県域汚水適正処理構想に反映させるか。
3)DX の推進
・ 国がDXカタログを作成。愛知県へ実装するためには、どのように活用するか。
4)脱炭素社会への取組み( 汚泥肥料化の推進等)
・愛知県は汚泥の安定処理のため焼却を原則としている。焼却灰の肥料利用をどのようなスキームで進めていくべきか更なる検討が必要と考えている。
5)歩掛適用外の業務におけるコンサルタントへの見積り依頼時に合わせて必要工期の確認
・歩掛適用外業務では、適正な業務価格と品質確保のため、見積依頼時に必要工期も併せて確認し、発注者・受注者で工期の考え方を共有のうえ適正な履行期間を提案していただくようお願いしたい。
6)早期発注や繰越制度、複数年契約( 債務負担行為)制度を活用した年度末納期集中の緩和
・年度末納期の集中緩和に向け、早期発注を推進するとともに、繰越制度や複数年契約(債務負担行為)を必要に応じて活用し、業務の平準化と適正な履行期間の確保に努める。
7)ウィークリー・スタンス、ワンデー・レスポンスの実施
・2025年度より実施要領を定めて、委託業務のウィークリースタンスの更なる推進を目指している。引き続き適正な時期の発注と工期の設定に努める。
8)オンライン会議の活用
・オンライン会議も、今後も可能な範囲で活用していく。
9)被災地の早期復旧を優先した作業体制構築への配慮
・ 2025年9月に愛知県と水道事業者(名古屋市を除く)と貴協会中部支部との間で技術支援の協定を締結した。2023年11月の下水道関係(愛知県、名古屋市と下水道未実施4町村を除く
49市町、協会)の協定締結に続き、上水道についても災害時に早期に対応する体制ができ、上下水道一体での対応にも寄与するものと考えている。引き続き実効性を高める取組みをお願いしたい。
10)緊急度に応じた随意契約の採用
・協定を活用し、緊急度に応じて随意契約を採用していく。
11)作業の実態を踏まえた適切な費用計上
・歩掛がない業務については、見積もりを聴取するなど、実態にあわせた積算に努める。
12)職員へのアンケートの結果より
・成果品が現場実態と合っていない、維持管理が考慮されていない、現場条件の把握不足や技術検討の不十分に伴い修正が多く必要であった。
・提案力が不足、成果品の品質にばらつきがある、照査が不十分であった。
・今後は、担当技術者の確保と責任ある業務体制の構築、迅速かつ密なコミュニケーションの実践、県とコンサル、双方の技術力向上と人材確保を求めたい。
【岐阜県】
1)積極的な提案について
・調査設計業務は、計画策定から詳細設計など様々な内容であり、専門的な知見を期待するものであるので、幅広く積極的な提案をお願いしたい。
・業務によっては、過年度成果を活用する場合もあり、その内容についても確認し、意見をお願いしたい。
2)成果品の品質確保について
・現地調査等を行った上で設計を実施してもらっているが、時折、支障物の見落としなどがあり、現場変更等が発生する事例があるので、しっかりチェックをお願いしたい。
・働き方改革で、時間内での業務が求められるので、大きな労力が必要となる手戻り、変更などがないようにお願いしたい。
3)災害対応への協力について
・岐阜県では、幸いにも下水道施設災害がほとんどない状況であるが、全国では大きな災害が発生しているので、災害への対応体制の確保は重要と考えている。
・令和6年2月1日に、「災害時における下水道施設等の技術支援協力に関する協定」を協会中部支部と締結している。
・県では災害対応の経験もないため、支援をお願いしたい。
4)官民連携など執行体制強化に向けた取組について
・小規模な自治体をはじめとして、執行体制の脆弱化が進んでおり、県としても今後の下水道事業経営をどうしていくべきか苦慮している。
・広域化、官民連携など様々な検討を行う必要があると考えており、業務で関係があった自治体などへ今後どうしていくべきかなどの助言をお願いしたい。
【静岡県】
1)点検・調査におけるDX化等による業務効率化の提案
・打音検査や空洞調査も含めた点検・調査業務の無人化技術の検討・開発
・管路埋設部の土質情報等も踏まえた劣化予測技術による、点検・調査箇所の抽出手法の検討・開発
・道路管理者等とも情報共有が可能な汎用性のある電子台帳システムの検討・開発
2)災害時の支援体制の確保
・災害査定資料作成の支援など災害時支援協定締結の一層の拡大
3)循環型社会への対応
・省エネ機器の導入等を含めた維持管理・更新計画の策定
・汚泥による創エネ、肥料化等脱炭素化に向けた技術支援
4)地域社会の持続を支える水コンサルタントの積極的な活用
・これまでも、着実な生活排水処理施設の整備推進や強靭で持続的な汚水処理システムの構築のため水コンサルタントの専門的知見を積極的に活用してきたところ。
・デジタル技術の活用や災害対応力の強化など、効率的な運営と質の向上を図るため、今後とも協力体制を継続していきたい。
5)働き方改革による人材確保やそれに伴う災害対応に向けた環境整備
・本県においても、貴協会と同様に業務の効率化推進のため、ノー残業デー実施等働きやすい職場環境の創出のため、様々な取り組みを行っているところ
・今後も設計協議におけるオンライン会議の活用やワンデーレスポンスといった取組を推進していきたい。
6)適正な予定価格・工期の設定と技術力や各地域での活躍も考慮したコンサルタントの選定
・本県では発注業務の透明性向上により、適正な価格や工期設定に取り組んでおり、地域特性に精通し、課題に即した提案力のあるコンサルタントを選定しているところ。
・今後も、適正価格・工期の設定を行い、地域特性やコンサルタントの技術力等のバランスをとりながら、品質確保と地域貢献の両立に向けて取り組みたい。
②水コン協からの「要望と提案」に対する回答
1)ヒト・モノ・カネの視点について
・県や各市町村を始めウォーターPPPに関しては、コンサルタントの知恵の絞りどころと考えている。
・維持管理から得られた気付きをどのように更新計画に反映するか、ポイントは、ウォーターPPPを単なる委託スキームの変更と考えずに、モニタリング、分析、更新計画への反映を適切に行い、次期の契約に繋げる形を作っていくことが求められている。
・改善するためのレビューや、故障や苦情情報を見える化するための仕組みづくりが重要である。
・導入可能性調査から発注支援業務の中からそれらを盛り込んでいくことが求められる。
・また、点検調査へのドローンやAI分析の活用が考えられる。具体的な調査やストックマネジメント計画への実装はこれからなので、コンサルタントとしても提案していく必要がある。
上下水道の一本化に伴う広域連携等は既に始まっており、県が積極的に関わりリーダーシップをとることが重要と考える。地域の成長戦略の一つとする仕立て等も有効と考える。
2)リスク管理の視点
・メンテナビリティの確保については、できない場合にどうしていくか、BCPも並行で進めていくことが重要と考える。
3)循環型社会への対応
・焼却灰の肥料利用があがっていたが、リン回収についても様々なものがあがっているため、今後は、提案型の事業を進めることが有効と考える。
・発注支援、モニタリング業務等でお役に立てればと考える。
4)災害支援について
・災害協定状況は、上水道、下水道の個別協定や上下水道一括協定など様々であるが、今後は、上下水道一体の災害支援を進めていきたい。
5)働き方改革と人財育成について
・見積依頼時に必要工期を提案してもらいたい。
・ウィークリースタンスに気を付けていきたい。人材の定着や育成に係る重大な事項である。
・年度末に納期が集中する長時間労働が問題となっている。早期発注や繰越制度、複数年契約の活用や、ウィークリースタンス、ワンデーレスポンス等、引き続き検討・推進いただきたい。
・品質確保、適正な利潤を確保して人材を確保するためにも、適正な予定価格の設定と低価格入札対策の強化をお願いする。
・仕様書における業務の目的、範囲、設計条件などの明確化も適正な予定価格・工期の設定には密接に関係する。

最後に、閉会にあたり、庄村支部長からの挨拶と、篠永典之 技術・研修委員長より閉会の挨拶をいただきました。
以上、報告です。